小中学生の書く文章が素晴らしい件について。大切なのは「正直であること」ただそれだけである。

 

私は塾の講師と家庭教師を何軒かやっている。

一番下は2歳から上は浪人生までと幅広い生徒と関わっていて、彼らと会話するのはとても楽しい。

彼らとの会話の多くは、不思議と、「雰囲気」とか「社交辞令」でするうわっつらの会話がほとんどない。だから、それが「オチ」とか「趣旨」を含まない会話だとしても、楽しいのだ。

 

とまあ、それは置いといて。

 

 

 

今回私が書きたいのは、そんな彼らの書く文章がなんとも素晴らしい件について。

 

 

 

①ヒロトくんの「失敗から学ぶ」

 

これは塾で指導していた時のこと。

私はその日、中学受験を控えたヒロトくん(仮名)の指導をしていた。教科は「小論文」。お題に応じて自分の思うことを600文字で綴るものですが、その日選んだお題は、『失敗から学ぶ』。

 

 

 

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ヒロトくん:「失敗から学んだこと?」

うーん、うーん。

 

 

すると、ヒロトくん

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なーまいきな。

 

 

ヒロトくん:「それにさ!失敗って言ってもさ、忘れ物するとかしょーもない失敗でしょ!だから何か学べることって、べっつにないよ!!!あはははh」

 

 

ま、まあ、一理ある。

 

 

 

 

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そして彼の書いた文章がこちら。

 

ぼくは、失敗から何かを学ぶことはほとんどありません。なぜなら、失敗といっても、ふだんぼくのする失敗というのは、忘れ物をするとか、ねぼうするとかお茶わんを落としてしまうとか、しょーもない失敗ばかりだからです。

しょーもない失敗は、しようと思ってするものではないし、また、次はやらないと決意したとしても、すぐに忘れてしまいます。人間はみんなうっかりすることはあるのだし、つまり、これらは防ぎようのない失敗なのです。だからそこから何かを学ぶことはできないと思います。

ただ、スポーツでする失敗はこれとは少し違います。ぼくはスノーボードでグリップという技ををやるときに、着地のしゅんかんまでボードを持っていて、地面と手がはさまれてしまったことがあります。このときはすごく痛くて、このタイミングまでにぎっていてはいけないのだと知って、次からはやらないようになりました。

このことからぼくが思うのは、失敗は失敗でも、痛かったり、体で経験する失敗というのはそこから学ぶことが必ずあるということです。でも日常生活でする失敗の方が多いから、ぼくはちゃんとそこから学ぶべきだと思います。

 

素晴らしいと思った。

 

何か立派なエピソードのある道徳的に完璧な小論文よりも、ずっとずっと素晴らしいと思った。おもわず拍手した。

 

なんというか、「まっすぐ」なのだ。偽りがない。思ったことに飾り立てがない。ヒロトくんの実際に書いた文章は誤字が多く日本語の言い回しも拙かったが、彼の言いたいことがまっすぐに伝わってきた。ぜんぶちゃんと伝わってきたのだ。言葉はテクニックではないと、体感でもって学んだ瞬間だった。

 

 

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②ミノリちゃんの「税について」

 

次は、中学3年生のミノリちゃんの作文。夏休みの宿題で「税金について」とのお題が出ていた。

 

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こんなふうに頭から良い文章を書こうという気がなかった彼女だが、文句を言いながらも書き上げた作文がこちら。

 

わたしは、日本に税金があり、社会のために使われていることは知っているけれど、でもわたしはまだ中学生なので、税金を払っている感覚もないし、税金がどこに使われているかもよく知りません。日本人の3大義務として、労働、教育、そして納税とあると知り、つまり日本人は全員生まれながらにして税金を納めなければいけないと決められているのですが、しかし、わたしは、いくら国民の義務でそれが法律で決められていると言われても、その税金が何に使われているのかよく知らないままに取られるのには納得できません。

(ねえ、今の子たちってなんでこんなに文章がうまいの?)

 

しかし原稿用紙が1枚も埋まらずして、ここで彼女の文章は止まっていた。聞くと、「もうこれ以上言いたいことはない」とのこと。

 

うん、じゃあ、これ以上に完璧な作文がどこにあるだろう?ミノリちゃんの税金への思いがぴったりしたためられた、「これ以上言いたいことはない」その文章を、どういう理由で減点できるだろう?

 

 

 

正直とは、すごい。ありのままとは、力だ。

 

 

なぜか心を打つものがある。いくら誤字があろうと文法が間違っていようと、何か絶対的な「完全性」がある。

 

 

③竹田ミヨコさんの「さよならみどりさん」

 

極め付けはこの作文。私はこれを初めて読んだときひっくり返った。

 

これは今から50年前の小学生が書いたもので、当時小学4年生であった私の叔母が、クラスメイトから贈られたものだ。叔母が転校するときに贈られたこの冊子には、元クラスメイトからの手紙が綴じられている。(担任の先生が作って贈ってくれたらしい。)

 

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先に説明しておくと、私の叔母は当時クラス一の乱暴者だった。男の子顔負けのパワーでもって、掃除をサボっていたり授業中うるさいクラスメイトを暴力で成敗していた。本人に言わせれば彼女はクラスのヒーロー的な存在だったらしい。(絶対ちがうけど。)

 

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手紙を書いた竹田ミヨコちゃん(仮名)は、叔母のクラスメイトだった。ミヨコちゃんはクラスで断トツで成績がよく、おまけに美人で上品な女の子だったらしい。そしてなぜか私の叔母と親しくしていたとのこと。(そこんとこの真相は確かではないが。)

 

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で、そのミヨコちゃんが私の叔母へ書いた手紙を読んでいただきたい。

 

 

 

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私とあなたは親友でもありライバルどうしでもありました。でもそれはいまではできませんね。

私は、あなたをそんけいしたりにくんだりしました。え〜、どうしてそんけいしたか、どうしてにくんだかって、そんけいするところはさきにたって私たちをまもってくれたからです。またにくんだところは、あなたじしんで考えてみてください。

でもあなたがいなくんるとこの組もさみしくなりますね。クラスマッチもまけてしまいそうですね。

私はあなたのことをわすれません。あなたもこの組のことをわすれないでくださいね。

では、お元気でさようなら。

 

子どもとは時に恐ろしい。その「正直さ」ゆえに。

まっすぐさゆえに。こんな文章、我々のだれが書けるだろう?書けるはずがない。狙ったって書けない。

 

 

ちなみにこの冊子には、他にも数多くの告発系の手紙がしたためられていて、なんとも爆笑ものなのだが、こんなものは、大人がいくらがんばっても絶対に作ることはできない。大作だ。

あの、純粋で、世界をまっすぐにみて、まっすぐな文章を書ける魂たちがそこにいたから、できあがった奇跡の一冊なのだと思う。ある意味こわい。

 

 

 

 

そう、よい文章を書くために大切なのは、「正直であること」「まっすぐであること」なのだと思う。

 

 

 

偽らず飾らず、まっすぐに世界を見て、心のままに書くこと。心のままに伝えること。そこに技術はほとんどいらない。無理矢理言葉を捻り出す必要もない。必要なことを、必要な分だけ並べればいいのだ。それが言葉の正しい使い方なのだ。

 

はたまたそれは、日常会話でも言えるのかもしれない。「必要なことを必要なだけ言う」。それだけで完璧な会話であり、完璧な表現であり、それは本来、頭を悩ませたりうんうん唸りながら言葉を絞り出すことではないのだ。

 

 

しかし残念ながら私たち大人は、本当には誰かに伝えたいことなんてそうそうないし、おまけに無言を「気まずい」とみなす文化的感覚が備わってしまっている。だから大人である私たちは今日も今日とて意味のない会話やくだらない文章で空気を埋めるしかないのだと思う。

 

 

 

ああ。みんなみんな小学生になれたらな。そしたら世界はもっと静かで「ほんとう」だろうな。とか思う。

 

 

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